【こんな人にオススメ】
とにかくたくさんお金を稼ぎたいと思っているあなた
お金が理由で、やりたいことや欲しいものを我慢しているあなた
今、仕事や人間関係がとてもつらく、自分の生き方を見つめ直したいあなた
- 著者:原田ひ香
- 書籍名:『月収』
- 出版社:中央公論新社
- 発売日:2025年2月21日
- ページ数:256ページ
- 価格:1,870円(税込)
他の書籍と差別化できるポイント
一般的なマネー本のように、「こうすればお金が増える」「これをやれば正解」という答えをまっすぐ示してくれる本ではありません。
『月収』は、月収4万円の66歳から、月収300万円の52歳まで、それぞれ異なる立場の女性たちを描いた人間ドラマです。出版社も、本書を「お金をテーマにした人間ドラマ」と紹介しており、『三千円の使いかた』と一緒に読んでほしい新作と位置づけています。
私がこの本を手に取ったきっかけは、もともと知人から原田ひ香さんを勧められていたことでした。最初に読んだのは『三千円の使いかた』で、今回の『月収』も同じように「お金」を入り口にしながら、もっと広く「人生そのもの」を考えさせてくれる作品でした。
読後に強く感じたのは、まず何よりも一つ一つの物語のリアリティです。
年齢も収入も置かれている環境もばらばらなのに、「こういう人、本当にいそうだな」と思える解像度がとても高い。単なるフィクションというより、誰かの人生をすぐそばで見ているような感覚がありました。
しかも、自分とはまったく違う境遇の人物でも、不思議とどこか共感できる部分があります。
お金に余裕があるかないかだけではなく、働く理由、暮らし方、将来への不安、人との距離感など、それぞれが抱える悩みがとても現実的だからです。
中でも特に印象に残ったのは、「月収8万の女」の大島成美です。
小説で成功して一発当てたい、という夢物語ではなく、「小説を書くことに専念するためのお金をどうつくるか」という発想から不動産投資に向き合っていく流れが、とても現実的で面白く感じました。夢を守るために、現実のお金とちゃんと向き合う。その姿勢が、この作品らしさをよく表していると思います。
また、最終話も非常に興味深い話でした。
訪問看護の仕事をきっかけに、遺品整理サービスへとつながっていく流れには強いリアリティがありました。高齢化や家族のあり方の変化といった、いまの社会が抱える課題やニーズをきちんと捉えていて、「小説なのに社会の輪郭まで見えてくる」感覚がありました。
作中では、高配当銘柄を買い、年配当の10倍ほど値上がりしたら売る、というような発想も描かれます。
こうした場面からも、著者の金融知識の豊富さが伝わってきます。ただし本書の魅力は、金融テクニックそのものではなく、「お金をどう使って、どう生きるか」を物語として考えさせてくれるところにあります。
この本を読んで改めて感じたのは、たくさん稼ぐことだけが、よい人生ではないということです。
もちろんお金は大事です。けれど、それ以上に大切なのは、自分が今どのような状況にあり、どのような立場で、何を優先して生きるのかを考えること。
本書は、その人にとっての「ちょうどいいお金との距離感」を考えさせてくれます。
著者紹介
原田ひ香さんは1970年神奈川県生まれ。
2005年に「リトルプリンセス2号」でNHK創作ラジオドラマ大賞を受賞し、2007年には「はじまらないティータイム」ですばる文学賞を受賞しています。代表作には『三千円の使いかた』『ランチ酒』『財布は踊る』などがあり、映像化された作品もあります。
原田ひ香さんの作品の魅力は、お金や暮らしといった生活に密着したテーマを扱いながら、説教くさくならず、物語として自然に読ませてくれるところだと思います。
「節約」「投資」「老後」「仕事」といった現実的なテーマが、登場人物たちの人生の揺れと結びついているからこそ、読む側も自分のこととして受け取りやすいのだと感じます。
本書を読むことで得られるメリット
- お金を増やすことだけではなく、「自分はどんな人生を送りたいのか」を考えるきっかけになります。
- 今の収入の多い少ないだけで人生を判断せず、自分に合った暮らし方や働き方を見つめ直せます。
- 投資や副収入、仕事のあり方などを、数字ではなく「人の人生」を通して考えられます。
- お金が理由で我慢やあきらめを重ねている人にとって、「本当に必要なのは何か」を整理するヒントになります。
- 金融教育の視点から見ても、「お金の知識」だけでなく「お金と人生の関係」を考える教材として、とても良い一冊です。
私がこの作品を読んで、読者にいちばん伝えたいと感じたのは、
まずは「どんな人生を送りたいか」を考えること、そしてそのために「いくら必要か」「自分は社会にどう役立てるか」を考えることが、幸せにつながる一つの道だということです。
お金はたしかに大切です。
でも、お金そのものを追いかけるだけではなく、自分の人生の目的や役割と結びつけて考えたとき、仕事も暮らしも少し違って見えてくる。
『月収』は、そのことを静かに、でも確かに教えてくれる作品でした。
気になった方は、ぜひ一度手に取ってみてください。
「月収」というわかりやすい言葉を入り口にしながら、最後にはきっと、自分の生き方そのものを見つめ直したくなる一冊です。