会社から給料をもらう。社長であっても、社員でも同じ。どこの業界も「売上ー費用=利益」というルールは同じ。社長や社員の給料は会社から見ると「費用」にあたります。
経済産業省による2019年の「企業活動基本調査」をもとに給料についてより具体的に考えることができます。さまざまな業種を比較しながら、経済のしくみとお金の流れについて触れ、「売上」と「給料」のちがいをみていきましょう。
モノの流れ
給料をもらうためには、売上をあげる必要があります。売上を確保するには大きく分けて二つ、何か物をつくって販売するか?接客などのサービスを提供するか?のいずれか。今回は物をつくる場合を例として解説します。
まず生産者が材料を仕入れたり、種をまいたり、そして機械を買ったりするところから始まります。例えばトヨタ自動車が車をつくるためにいろいろな会社や工場から部品を調達したり、農家が作物をつくるために種や苗などを仕入れます。同時にたくさん自動車をつくるため、もしくは高品質の野菜や果物、家畜を生産するために古くなった機械を最新の機器に買い替えて、フル稼働させます。製品をつくるために人も大勢雇います。
手間とお金をかけて出来上がった製品(もしくは生産物)は、問屋さんや商社などを経由して、小売店(オンラインショップ含む)に運ばれ、ようやく私たちが利用するお店に並びます。トヨタ自動車なら各地域のディーラーへ、農家ならJAやスーパーなど。取引形態はこれに限らず、生産者から直接消費者が購入することもあれば、いくつもの業者を経由することもあります。
店頭(オンラインショップ含む)から商品が購入されて初めてお金がもらえます。
お金の流れ
お客様が支払った代金の積み重ねが売上となります。店頭(オンラインショップ含む)へ支払ったお金の一部は、そのお店から中間業者(問屋や商社、運送会社など)へ仕入れ代金や運送料の支払いとして流れていき、最終的に生産者のもとへやってきます。
つまり、一つの商品が売れることによって製造業、卸売業、小売業それぞれの会社の売上となります。モノから商品になるには、さまざまな業種の人の手や機械が必要になります。あなたが車好きなら、どこの業界でどんな職種で活躍するか選択肢がたくさんあるわけです。
売上高 (百万円) | 営業費用 (百万円) | 営業費用率 | 営業利益 (百万円) | 営業利益率 | |
製造業 | 22,785 | 21,690 | 95% | 1,095 | 4.8% |
卸売業 | 42,063 | 41,261 | 98% | 802 | 1.9% |
小売業 | 24,945 | 24,257 | 95% | 687 | 2.7% |
しかし「売上」がすべて社長や社員の給料となるわけではありません。仕入れた材料費やものを作るために買った機械の代金、宣伝広告費、家賃や光熱費などの費用も毎月支払いが発生しています。これらは売上原価や販売費、一般管理費として「営業費用」に該当します。経産省の調査では営業費用の9.1%が給与総額となっています。
営業費用 (百万円) | 給与総額 (×9.1%で試算) | 常時従業員数(人) | うち正規雇用 | うち非正規雇用 | |
製造業 | 21,690 | 1,973 | 415 | 352 | 56 |
卸売業 | 42,063 | 3,827 | 276 | 223 | 50 |
小売業 | 24,945 | 2,279 | 954 | 328 | 617 |
例えば、上の表から製造業では一企業あたりの売上は216円。そのうち19億円が社長や社員へ払う給与の総額ということになります。単純計算、19億円を常時従業員数415人で均等にわけると、一人あたりの給与は457万円ということになります。非正規雇用なら457万円を下回り、浮いた予算が社長や役員、役職者への報酬となっているのでしょう。
会社として「給与」を増やすには、①「売上」を増やすこと、②コスト削減をして「営業費用」を少なくすること、が重要なわけです。
まとめ
基本的な構造はどこの業界でも「売上ー費用=利益」ということ、わかっていただけましたでしょうか?「給料」は「費用」の一部です。
業種ごとに各項目の数字は異なり、生産性も違います。つまり一人あたりの平均給与も異なってくるということ。給与の高い働き方や起業する際に挑戦する業界を考える一つの目安にもなります。
今回は2019年の「企業活動基本調査」を用いたので、従業員数50名以上、資本金3,000万円以上の企業約30,000社を集めたデータから公表された数字をもとにまとめました。中堅企業から大企業クラスが該当します。具体的に将来のやりたい仕事があれば、さらなる深堀りをしてみてはいかがでしょうか?