身近な中学生へ投資に対するイメージを聞いたところ、「ギャンブルみたい」「お金が減ってしまうから怖い」といった感想が返ってきました。
金融広報中央委員会が行った調査(2023年版)からも、「投資に興味はあるが、具体的な内容やリスクを十分に理解できていない」といった傾向が見られます。
・「1ドル=120円」から「1ドル=140円になったら、「円高」である(正答率65.5%)
出所:「15 歳のお金とくらしに関する知識・行動調査 2023 年」の概要
・金融商品のリスクとリターンの関係性について、正しい組み合わせ(同52.5%)
・リスクが低く、リターンが高い金融商品はない(同47.4%)
・投資をする場合、1社の株だけを買うことは、通常、株式投資信託を買うよりも安全な投資である(同40.8%)
しかし、投資はギャンブルでも詐欺でもありません。正しく理解すれば、恐れることなく自分の資産を守り、増やす手段にもなります。むしろ知らないことで損をする可能性さえあります。
この記事では、これから投資が当たり前になる世代に向けて、まず知ってほしい基本的な内容を簡潔にまとめました。授業や学びの場で活用できるエッセンスも交えています。
そもそも投資とは
投資とは、将来のために「時間」と「お金」を使うことです。
たとえば、勉強やスポーツといった「自分への投資」や、株式や会社を応援する「事業への投資」があります。自分への投資では知識やスキルを磨き、将来の収入につながります。いっぽうで、事業への投資は資産を増やし、守る手段になります。
資産とは、現金や株式、債券、不動産などのことです。

投資とギャンブルの違い
投資は、社会や経済に必要不可欠なものであり、自分の知識や情報を活用して結果をある程度コントロールできるものです。
いっぽう、ギャンブルは結果が運任せであり、得られる利益の総額が限られているゼロサムゲームです。たとえば、宝くじでは、集められた売上の一部が賞金として分配されますが、売上全額が賞金になるわけではありません。そのため、多くの参加者は支払った金額以上の利益を得られず、最終的に「勝つ人」と「負ける人」がはっきりと分かれます。

投資は社会貢献
投資されたお金は、企業が新たな商品やサービスを開発するために使われます。その結果、顧客や社会が抱えた問題を解決することにつながります。顧客や社会から支持をうけた企業は収益を上げ、そのお金でまた新たな投資をし、さらにより良い商品やサービスを生み出していくことになります。
たとえば、誰もが知るAmazonも投資家の支援がなければ、現在のような規模やスピードで成長することは難しかったでしょう。Amazonは1995年にインターネットで販売を開始して以来、より安く・よりたくさん・より早く・より便利を追求し続けています。価値観が多様化し、物があふれ、忙しい毎日を送っている地球上の人々のニーズと上手く合致しました。

今ではインターネット販売であげた収益をクラウドサービスの「AWS」へ投資をし、GoogleやMicrosoftとしのぎを削っています。これにより、より多くの課題解決が進められています。
日本の政府機関も、このクラウドサービスを利用しています。
投資に必要な視点
投資には、「長期的な変化」を見通す視点が重要です。
「長期的な変化」とは、
・日本の人口は減少傾向だが、世界全体の人口は増加している
・環境問題が深刻化し、持続可能なエネルギーが求められている
・高齢化や働き方改革による新たな課題
同時に「短期的な動き」にも注目し、背景を理解することが求められます。
「短期的な動き」としては、
・なぜ円安ドル高の傾向が続いているのか?
・なぜアメリカは金利が高く、日本は低いままなのか?
などです。
これらの動きに関心を持つことも大切ですが、一喜一憂すると投資が上手くいかない可能性が高まります。あくまでも「長期的な変化」をベースに「短期的な動き」の背景について自ら情報を集め、考え、答えを探っていける力を養いましょう。(参考までに実践ワークを後述しました)
主な投資商品
具体的に投資する場合の主な金融商品と特徴を紹介します。

株式投資
企業へ出資をして、株主(企業の一部を所有する)となります。毎年の業績に応じて配当金がもらえます。株価の値上がりによる売却益も期待できます。
債券投資
企業や政府、地方自治体などへお金を貸します。毎年の利子が受け取れ、期間が満了すると貸したお金(元本)が返ってきます。期間途中の売却もできますが、その場合は元本保証されません。
不動産投資
不動産を所有(土地や建物の持ち主)し、誰かに貸して家賃収入を得ます。不動産が値上がりすると、売却益も期待できます。
投資信託
運用の専門家(ファンド)へ資産運用を任せる商品です。運用先は株式、債券、不動産で、運用地域も国内や海外など組み合わせはさまざまです。


中学生でも始められる投資
投資への理解を深めるには、実際に投資をやってみることが一番の近道です。
未成年でも証券口座を開設し、小額から投資を始めることが可能です。最近では1株から購入できるサービスもあり、手軽に投資を体験できます。また積立投資なら数百円からできますし、外国株や海外のETF(上場している投資信託のこと)なら1万円以内の銘柄もたくさん選べます。
上述したAmazonは、1株223.79米ドル(2024年12月27日時点)で購入できます。
下記にほんの一例ですが、米国企業の株式を紹介します。銘柄は他にもいろいろありますので、興味があったらぜひ調べて見てくださいね。

【3万円以下で買える米国株】
コカ・コーラ:62.45米ドル
超おなじみのコカ・コーラのメーカー
ナイキ:76.42米ドル
アメリカのスポーツウェアのメーカー
ウォルト・ディズニー:111.55米ドル
みんな大好きディズニーの本家本元
アルファベット:192.76米ドル
グーグルを運営する会社
【5万円以下で買える米国株】
Amazon:223.79米ドル
この記事にも紹介したAmazon
アップル:255.65米ドル
スティーブ・ジョブズ氏のiPhoneを生み出した会社
ビザ:318.66米ドル
VISAカードのグローバル決済テクノロジー企業
※1株あたりの購入金額(2024年12月27日時点)
まとめ
投資は、将来のためにお金や時間を使って、社会に貢献する(世の中の問題を解決する)手段です。経済に必要不可欠なものであり、自分の知識や情報を活用して、結果をある程度コントロールできることは、ギャンブルと異なる点です。
投資をするにあたっては、長期的な視点を持ちながら、少額から始めることでリスクを抑えつつ学ぶことができます。
みんなで考える実践ワーク
課題例①:なぜ1年で21円も円安になったのでしょうか?

【ポイント】
・1年で21円の変動は過去と比べてどの程度なのか?1年毎に過去を振り返ってみましょう。
・直近半年内での大きな出来事は、アメリカが政策金利を引き上げたことです。
・政策金利の上げた背景には、物価の上昇が続いていることや失業率が堅調なことがあげられます。
※正解は一つではありません。さまざまな要因が考えられます。個々の意見や考えの共有し、関心を向けることがねらいです。
課題例②:アメリカと日本の金利上昇率の違いは、なぜ起こっているのでしょうか?

【ポイント】
・物価の上昇を抑えるための手段として、政策金利を上げる方法が一般的に用いられます。
・政策金利を上げると、銀行の住宅ローンや企業への貸し付け金利も高くなります。
・政策金利を上げると、安定運用が目指せる債券へお金がシフトし、株価が下がると言われています。
※正解は一つではありません。さまざまな要因が考えられます。意見や考えの共有し、関心を向けることがねらいです。
・ブログを読んだけど、まだ投資について授業で触れることが不安
・公民の授業との関係性が高まるようを工夫したい
・この〇〇な部分がわからない
そう思われたら、ぜひお気軽にこちらからお問い合わせください。