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シリーズ④ 高校家庭科の金融教育で使えるコンテンツ(公的保険と民間保険編)

授業のヒント

大学受験に向けた時間割や技能実習によって、家庭科の授業時間が充分に確保できない学校もあると聞いています。家庭科の教科書のテーマは、家族や子どもとの関わり、衣食住、そして金融教育など、非常に幅広い内容をカバーしています。限られた授業時間の中で、すべてを網羅することはできず、先生方も多くの課題を抱えていることでしょう。

この記事では、「生徒たちの将来のために、お金のことをしっかりと伝えたい!」という金融教育への熱い思いを抱く家庭科の教職員の皆さまにむけてまとめました。私はFP1級のSDGs金融教育アドバイザーとして、実教出版の「Agenda家庭基礎」に掲載されている内容を独自に5つのテーマに分けてお伝えします。この教科書における金融教育の本質は、「生涯の見通し」と「社会とのつながり」を理解し、自立するための準備をすることです。

今回は、シリーズ第4回のテーマとして『公的保険と民間保険』を取り上げます。具体的な数字を交えながら、生徒の皆さんにより説得力ある情報を掲載しました。

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保険の基本的なしくみ

保険の基本的なしくみは「助け合い」です。予期しない出来事や災害が起きたときに、経済的な損失(負担)を軽くするためのしくみです。例えば、突然の病気やケガ、車の事故などによる経済的な損害から保険が助けてくれます。たくさんの人が少しずつお金(保険料)を出し合い、一人では負担しきれない大きな被害(損失)に備えるしくみです。

助け合いのイメージ図

保険には「公的保険」「民間保険」があります。どちらも将来起こりうるお金の負担を軽くしてくれます。病気やケガの医療費など、予期しない出費を大幅に減らしたり、老後の生活資金の一部を準備したり、将来の計画に対する経済的な安定を図ることができます。

保険の支払い事由と種類の一例
試算条件

※1遺族基礎年金:配偶者と18歳未満の子2名の場合
※2高額療養費制度における1ヶ月の自己負担限度額(年収約370万円〜約770万円の場合)
※3高齢世帯の平均年間公的年金額
※4要介護2(本人の年間所得160万円未満)の場合 ※食費、居住費を除く

公的保険の概要

公的保険とは何か?

公的保険とは、国や地方自治体が運営している保険のことです。ほぼすべての人は加入することが義務付けられています。国(税金)や企業、国民で費用を負担し合うため、保険料が比較的安く設定されています。

具体的な公的保険の例

主な公的保険には「公的医療保険」「公的年金」があります。公的医療保険は、病気やケガの医療費の負担を軽くしてくれる制度です。加入することで、病院での診察や薬の購入時の費用は3割負担で済みます。※6〜69歳および70歳以上で現役並みの所得がある者

病院で発行される領収書のイメージ図

公的年金は、働けなくなったときの保障や老後の生活に備えるための制度です。この制度に加入することで、死亡時には遺族が生活費の一部をもらえ、所定の障害状態になったときには障害年金が受け取れ、老後の生活には老齢年金が収入源となります。

3つの年金の年金額(例)
試算条件

※1老齢基礎年金:65歳受給者の場合(令和5年4月時点)
※2障害基礎年金:1級認定 配偶者と18歳未満の子2名の場合
※3遺族基礎年金:配偶者と18歳未満の子2名の場合

他にも主に高齢者が介護サービスや施設の利用が必要な場合には、介護保険制度があります。

民間保険の概要

民間保険とは何か?

民間保険とは、国や自治体が提供する公的保険とは異なり、民間の保険会社などが販売している商品です。個人や家族のニーズに合わせたさまざまな保険商品があります。例えば、生命保険やがん保険は、公的保険の不足分を補ってくれる民間保険の代表的な例です。

生命保険は、残された家族のために経済的な支援を提供します。がん保険は、がんになった場合の治療費や経済的なサポートを受けるための保険です。

公的保険とは異なり、加入するかどうか、どの保険商品を選ぶかは自分で決めることができます。また、保険料は商品や保障内容によって異なり、保険金は個別の契約条件に基づいて支払われます。契約の際には、保険商品の内容をよく理解し、自分のニーズに合ったものを選ぶことがとても重要です。

民間の保険会社が扱う商品(例)

具体的な民間保険の例

「生命保険」は、不慮の事故や病気などにより死亡した場合に残された家族がお金を受け取れます。もしもの時に、家族がお金の心配をせずに生活できるようになります。また民間の「医療保険」「介護保険」は、病気やケガ、介護になったときの自己負担部分をカバーしてくれる保険です。同じく民間の「年金保険」は、将来の公的年金に上乗せするための商品です。

さらに詳しく民間保険について知りたい方は、こちらから小冊子を購入できます。
出版物(小冊子)の紹介 (公益財団法人生命保険文化センターホームページ)

公的保険と民間保険の違い

保険の内容と範囲の違い

公的保険は国や自治体が提供し、全国民に共通の保障内容が適用されます。いっぽう民間保険は民間企業が提供し、保険商品によって内容や保障範囲が異なります。自分や家族のニーズに合わせて公的保険と民間保険を上手に活用することが大切です。

料金や支払い方法の違い

公的保険の料金は、国民全体からの保険料や税金から賄われます。たとえば、健康保険は、主に給与から天引きされます。保険料は、収入に応じて決まります。民間保険の料金は、個別の契約に基づいています。保険会社との契約により、一定期間ごとに保険料を支払います。保険料の金額は、契約内容や保険商品によって異なります。支払い方法は、口座振替やクレジットカード払いなど複数の選択肢があります。

保険金支払いまでの手続きの違い

公的保険では、保険金の支払い手続きは比較的シンプルです。たとえば、健康保険では、病院での利用時に直接支払われるので、自己負担分だけの精算で済みます。民間保険では、契約内容に基づいて手続きが進められます。患者の状況に応じて必要な書類があり、保険会社がそれらを審査します。特に問題がなければ、一定の期間内に保険金が支払われます。

公的保険と民間保険のメリットとデメリット

民間保険を選ぶときのポイント

加入の目的を明確にする

自分が亡くなったときに家族へお金を残したいのか、働いているときの予期せぬ出費や収入減などに備えたいのか、老後の介護費用や生活費を準備したいのか、保険に入る目的(ニーズ)を明確にしましょう。

民間の保険加入時におけるニーズと加入の目的(例)

保障内容をよく確認する

自分が必要とするリスクや目的に合った保障内容か、十分な保険金額か、支払われない場合などを比較検討します。

適正な保険料で加入する

保険料は、長期にわたり支払いつづける必要があります。自分の収入や予算に合わせて、保険料の負担範囲を考えましょう。生命保険文化センターが2019年に実施した「生活保障に関する調査」によると、年間に支払う保険料の平均額は、男性23.4万円・女性16.8万円・世帯あたり37.1万円となっています。

信頼できる保険会社を選ぶ

保険会社の評判や実績、クレーム対応などを調べて、信頼できる会社を選びましょう。時間的に余裕があれば、複数の保険会社を比較検討するとより納得感を得られるでしょう。

まとめ

公的保険は、国や自治体が提供する保険で、ほぼすべての国民が基本的な保障を受けられます。死亡、病気やケガ、介護、老後における経済的な負担を軽くしてくれます。

いっぽう、民間保険は保険会社が提供する商品です。公的保険だけでは不足する金額やカバーされない特定のリスクに対応します。民間保険は公的保険の補完として、より広範な保障やサービスを提供する役割があります。

まずは、自分に当てはまる公的保険をしっかりと理解しましょう。そのうえで民間保険を適切に組み合わせることで、自分や家族のリスクや将来の不安を軽減することができます。重要なのは、自分のニーズや目的に合った保険を選び、将来のリスクに過不足なく備えることです。

実践ワーク

・わが家が毎月支払っている公的医療保険と公的年金の保険料を確認してみましょう。
・親権者が亡くなった場合に、遺族年金がいくらもらえるのか試算してみましょう。
・障害年金や介護保険をもらえる条件を確認してみましょう。

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