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シリーズ③ 高校家庭科の金融教育で使えるコンテンツ(貯蓄と投資編)

授業のヒント

大学受験にむけた時間割や技能実習などで、家庭科の時間が十分に確保できない学校もあるとききました。教科書のテーマは、家族や子どもとのかかわり、衣食住、さらには金融教育まで、盛りだくさん。限られたコマ数で、すべてをやりきれないもどかしさを抱える先生方も多いのではないでしょうか。

この記事では「生徒たちの将来のために、お金のことをちゃんと伝えたい!」と、金融教育に熱い思いをいだく、家庭科の教職員のみなさまのためにまとめました。

FP1級のSDGs金融教育アドバイザーが、実教出版「Agenda家庭基礎」に掲載されている内容を独自に5つのテーマにわけて、お伝えします。この教科書における金融教育の本質は「生涯の見通し」と「社会とのつながり」を理解し、自立に備えることです。

シリーズ第3回のテーマは『貯蓄と投資』です。生徒の皆さんが興味をもって授業にのぞんでもらえるように、具体的な事例も活用しています。

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三大支出だけで1億7,161万円

生きていくなかでさまざまなライフイベントがあり、それぞれにお金がかかります。特に人生の三大支出といわれる「子どもの教育費」「住まいにかかる費用」「老後の生活資金」だけで、合計1億7,161万円の試算結果となっています。

生涯年収と三大支出について

<前提条件と出所>
・夫婦が生涯共働きで、子どもは二人
・高校卒業まで公立、大学は私大理系へ進学
・国内の平均年収は「国税庁令和3年分民間給与実態統計調査」より
・高校卒業までの教育資金は「文部科学省の平成30年度子供の学習費調査の結果」より
・大学の費用は「文部科学省2019年国公私立大学の授業料等の推移」より
・住まいの費用は「住宅金融支援機構2020年度フラット35利用者調査」より
・老後の生活費は「生命保険文化センター2022年度生活保障に関する調査」より

いっぽう収入については生涯夫婦共働きの場合、平均年収で試算すると3億8,089万円が見込めます。三大支出との差額は2億928万円です。つまりおよそ2億円のなかから、毎日の生活費を支払い、趣味やレジャーを楽しみながら、貯蓄や投資をつづけていくことになります。

生涯年収と三大支出の差額

収入の10%は先取り貯蓄&投資をする

毎月のお金の管理が苦手で、ついつい使いすぎてしまう人も多いではないでしょうか。将来をみすえた長期的な資金の準備には、お金が余ってから、貯めたり、投資したりするのではなく、自動的に貯められる(投資しつづける)しくみが効果的です。

家計のなかでの貯蓄と投資

いわゆる先取り貯蓄&投資の手段として、銀行預金の「積立定期預金」や証券会社の「つみたてNISA」などは有効です。毎月一定額を自動的に貯める、もしくは投資をするので、無理のない範囲で長くつづけることができます。気がついたら、けっこう貯まっている、増えている、という感覚になります。

【コラム】
貯金と預金は何が違う?


結論として「貯金」も「預金」も同じです。銀行にお金を預けたら「預金」ゆうちょ銀行なら「貯金」となります。
日常会話で「貯金」というフレーズが一般的に使われる理由は、明治政府の方針が一因のようです。
銀行預金の認可より、4年先に郵便貯金が制定され、全国的に貯蓄推奨が広まった経緯があるそうです。

出所:教養としての「金融&ファイナンス」大全 著:野崎浩成 日本実業出版社

金融商品の全体像

さまざまなライフイベントを手に入れ、充実した人生を送るために、金融商品は欠かせない存在です。そのためには、目的にあわせた商品選びがポイントとなります。選択をまちがえると、享受できるであろう利益を逃したり、思わぬ元本割れにくやしい思いをする可能性があります。下図に金融商品の全体像をまとめました。

目的別にわけた金融商品の全体像

将来お金が必要となる時期が、いつ訪れるかを考えてみましょう。例えば、来年もしくは再来年くらいに新しい車を買いたいなら、それは短期に必要となる資金です。貯金や預金などの元本割れしない商品が最適です。

また毎月の収入が安定しており、この先10年くらい使わないお金があるなら、投資用資金として株式や債券、投資信託などの購入を検討します。さらに長期にわたり保障もかねて、お金を貯めるなら保険を活用する選択肢もでてきます。

このように、お金を使う時期や毎月の収入などによって、お金のおきどころ、貯めどころを変えておくことが、効率のよい資産運用につながります。

ちなみに確定拠出年金iDeCoは、これらすべての商品が対象となっているので、ライフプランや景気に応じて、いろいろ商品を組み替えることができます。ただし、60歳まで使うことができないので、長期の資金を準備することに限られます。いっぽう、つみたてNISAは株式投資信託に限定されているので、短期の運用&取引には不向きです。あわせて知っておきましょう。

毎年320万円の財産所得

実教出版「Agenda家庭基礎」にある「財産所得」について、具体的にみていきましょう。
財産所得には「インカムゲイン」「キャピタルゲイン」の2つがあります。「インカムゲイン」とは、金融商品をもっている間にもらえる配当金や利子、分配金のこと。「キャピタルゲイン」は買ったときよりも、高く売れたときの儲けのことです。

インカムゲインとキャピタルゲインについて

具体的に三菱UFJ銀行の株式でみてみましょう。インカムゲインである配当金については、最低購入株数である100株あたり、32円の予定と公表されています。いっぽうキャピタルゲインは買ったときと、売ったときの差額になるので、2022年12月20日に800円で買い、2023年3月10日に950円で売った場合とします。

三菱UFJ銀行のインカムゲインとキャピタルゲイン

三菱UFJ銀行の株式100,000株(2023年3月17日終値で84,000,000円)もっていると、配当金が年間3,200,000円もらえるわけです。※税引前利益 

これだけあれば、最低限の生活はできそうですよね。今、話題のFIRE(Financial Independent Retire Early)は、主にこのような配当金で(インカムゲイン)、経済的自立と早期リタイアを目指す生き方です。

また同じ100,000株でキャピタルゲインも試算してみましょう。1株あたり150円(950円-800円)の値上がりですから、15,000,000円の儲けとなります。※税引前利益 

国の経済を支える「貯蓄と投資」

投資活動は個人の利益だけにとどまらず、社会のためには必要不可欠です。消費と同じく、貯蓄や投資にまわるお金は、企業へ還元され、GDPへの影響を及ぼします。
つまり、個人が貯蓄や投資をおこなうことにより、お金が企業へ集まります。企業は集まった資金で事業活動をおこない、売上げを拡大し、利益を増やします。利益が増えれば、従業員への給料や国へ納める税金も増えます。

GDPにおける貯蓄と投資の位置づけ

このような好循環が、日本の経済力を支える土台となります。それゆえ、国内の各企業も海外企業に負けじと、世界中の人たちから投資先として選んでもらえるような、企業努力が常に求められています。

まとめ

さまざまなライフイベントを手に入れ、充実した人生を送るためには、お金が必要になります。それらの資金は、生涯の収入をどう分配していくかがポイントになります。だからこそ、計画的に貯蓄や投資が大切であること、おわかりいただけましたか?

お金を使う時期によって、選ぶ金融商品はことなりますが、結果として、一人ひとりの投資家の活動は、国をささえる土台となります。

実践ワーク

生涯年収や三大支出について、意見を共有してみましょう。

【ポイント】
・将来やってみたい仕事があるなら、毎年いくら稼げるのかを調べてみる
・結婚や出産、子育てによる生涯収支への影響についての考え方も共有してみる
・自分なりのライフプランを発表しよう(夢を語ろう!)

具体的な金融商品について、Webで調べてみましょう。

【ポイント】
・定期預貯金の金利を確認する(1,000万円預けたらいくら増えるか?)
・都市銀行や地方銀行と、ネット銀行との金利を比較してみる(その理由も考える)
・気になる企業、話題の会社の株式や配当金を調べてみる

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