学校から借りたタブレットや自転車賠償の保険　PTA連合会の保険を解説（2024年4月入学生向け）

「高等学校PTA連合会の保険」は、学校から貸与されるタブレットを子どもが壊したときや、都道府県の自転車条例への備えとして、各学校で案内される手軽な掛け金で補償してくれる団体保険です。しかし、実際にパンフレットをみても用語や細かい規定までは、保険に馴染みのない保護者の方には難しいと思われます。また卒業＆入学シーズンで日々忙しいなか、じっくり比較・検討する時間もないでしょう。

この記事では2024年4月入学生向けに配られた資料をもとに「高等学校PTA連合会の保険」についてわかりやすく解説します。各社のおすすめプランと最安プランの比較表も作りましたので、どこの保険会社で、どのプランに加入すべきかの判断にぜひ活用してみてください。

※出所：東京海上日動火災保険㈱、三井住友海上火災保険㈱、損害保険ジャパン㈱、AIG損害保険㈱2024年入学生向けパンフレット
※詳細については各保険会社、担当代理店へお問い合わせください。
※「小中学生向けの生活総合保険」等も同等商品の可能性があります。該当する場合はこちらを参考にしてみてください。

学校から借りたタブレットや自転車賠償の保険　PTA連合会の保険を解説（2023年4月入学生向け）

この記事では2023年4月入学生の説明会で配られた資料をもとに「高等学校PTA連合会の保険」についてわかりやすく解説します。補償内容の比較表も作りましたので、加入すべきかどうかの判断にぜひ活用してください。

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2024.02.26

PTA連合会の保険とは

学校生活でのアクシデントやトラブルに備えるための保険です。
主な例をあげると、
・自転車の運転で、他人をケガさせた
・自転車で転倒して、自分がケガをした
・授業中や部活動でケガをした
・自ら所有する携行品（スマホやスポーツ用品、楽器）を壊した
・学校から貸与されたタブレットを壊した
などです。

つまり、一般的な傷害保険を高校生活向けにアレンジした保険です。
各社細かい部分は異なりますので、確認が必要です。

タブレットが対象となる保険

「受託品賠償責任保険」であれば、学校から借りたタブレットを壊しても補償してもらえます。しかしこの補償は、今のところ一部の火災保険や傷害保険の特約のみで対応する方法に限られます。

保険は本来、自分の持ち物に備えることはできますが、他人の所有物に対して勝手に保険をかけることができません。

いっぽうで多くの方が加入している、自動車保険や火災保険にオプションとして個人賠償責任補償の特約があります。この特約は、他人から借りたものは持ち主の管理下になく、リスクが高いため対象外とされています。

したがって通常、学校から貸与されたタブレットは、他人の所有物にあたり、借りた生徒が常に持っているため、個人賠償責任補償の特約では対応できないわけです。
「自分のものじゃないから扱いが雑になりがちだ」と、保険会社は判断しているわけです。

その点を補うべく、高等学校PTA連合会の団体保険では対象保険会社4社とも、学校から貸与されるタブレットについて、約款を変更して保険の対象となっています。

注意すべき点は、学校から借りたタブレットは賠償責任に該当するため、保険金の上限額は修理費もしくは時価の低い金額までの補償となります。

一般的には、実際の購入年月から現在の価値を算定する方法と、中古市場の相場から時価を決める方法があります。

経過年数が経っており、修理費用が時価を超えてしまうと、保険金としては時価までの支払いとなります。その場合は、修理費用の全額を受け取れず、自己負担が発生する可能性もあります。

さらに各社の細かい点をお伝えすると、共通して学校活動中だけでなく、自宅で壊したときも保険の対象となります。

主だった各社の違い３つを解説

携行品損害補償

まず広く学校生活の観点からすると、携行品損害補償（スマホやメガネ、部活関連の道具など生徒の所持品）は、保険商品選びの重要なポイントです。

携行品損害補償については、対象4社のうち3社（東京海上を除く）が対応しています。三井住友海上と損害保険ジャパンが再調達額（新価）補償または修理費であるのに対して、AIG損害保険は時価または修理費となっています。

壊れたものを確実に元通り（買ったときの状態）にできるのは「再調達額（新価）補償」となります。古くなったものでも時価を超えて、買い替え費用が補償されます。ただし、保険金額が上限となります。

ケガの通院保険金

部活動や自転車通学などでケガが多くなりそうだな、と心配な方は「3年間の保険料」と「1日あたりの通院保険金」を比較してみましょう。実は、請求件数の7割以上が「通院保険金」といわれています。

東京海上を除く3社は、日常生活の事故（部活動中のケガなど）と、自転車事故で、1日あたりの通院保険金が異なります。その上で自転車以外の事故なら東京海上日動が最短21日で、自転車事故なら三井住友海上が最短6日で、もとが取れる計算になります。※2023年度は自転車事故の場合、三井住友海上の7日が最短でした。

個人賠償責任の保険金額

「高等学校PTA連合会の保険」への加入目的の一つ、自転車で他人をケガさせたときの補償は重要です。その際に補償される保険金は少なくとも3億円以上が必要です。下記の支払い事例では自転車に乗っていた加害者は、1億円近い賠償金の請求を受けています。もし被害に遭われた方がもっと高収入で、扶養家族が多い、寝たきりの状態が長期間続くなどの場合は、さらに高額な賠償金になることも十分にありえます。

個人賠償責任の保険は、自動車保険や火災保険の特約で付帯されていることもあります。（未付帯の方でも中途付帯できます）重複して支払われることはありませんので、双方合わせて、もしくはいずれかで3億円以上の準備が安心です。

今回比較している4つのプランでは、東京海上日動、三井住友海上、損害保険ジャパンが3億円以上です。AIG損害保険の中から選ぶなら「S1プラン」ではなく、個人賠償責任が無制限のプランを検討しましょう。（自動車保険や火災保険ですでに個人賠償責任補償特約があれば、この限りではありません）

マイノリティーな３つの補償

地震への備え

基本的に地震や津波、噴火によるケガは保険の対象外です。しかし、AIG損害保険のみ「地震・噴火・津波補償特約」により補償範囲が拡大されています。絶対に地震の補償がなくては困る方は、AIG損害保険一択です。※2023年度までは三井住友海上も地震の補償がありました。

交友関係などのトラブルに備える

こちらもAIG損害保険のみ選べる補償です。「トラブル被害対応補償特約」は、弁護士相談や訴訟関連費用をはじめ防犯対策、カウンセリング費用などを保険金で負担できる特約です。トラブルの事例は下記の通りです。女子生徒の保護者の方には、検討の価値があるかもしれませんね。

特定感染症への備え

新型コロナウイルス感染症が特定感染症の五類に格下げになったことにより、ニーズがほぼ無くなりました。「特定感染症補償特約」は一類〜三類で指定された傷病にのみ補償が受けられます。

新型コロナウイルス感染症により医師の指示や重症化などで入院した場合には、各保険会社の「（病気・疾病）入院医療保険金」の対象となります。※東京海上日動とAIG損害保険は1泊2日以上の入院が必要です。

補償が最低限の「最安プラン」を検証

できるだけ支払う保険料は抑えたいなら、各社の「最安プラン」を検討されることもあるでしょう。今回比較している4社なら、3年間の保険料が3,700円〜5,500円の範囲で選べます。

基本的に最安プランは「自転車で他人をケガさせたとき」と「学校から貸与されたタブレットの補償」に重きがおかれています。最も保険料が安い三井住友海上（保険料3,700円）は、賠償責任保険金が1億円で、自転車事故のみの死亡保険金と後遺障害保険金が受け取れます。損害保険ジャパン（保険料3,800円）も同等の内容です。

東京海上日動（保険料4,900円）は、個人賠償責任保険金が無制限となり、自転車事故以外の死亡保険金と後遺障害保険金も受け取れます。最安プランの中では最も保険料が高いAIG損害保険（保険料5,500円）は、個人賠償責任保険金は1億円ですが自転車事故の「入院」と「通院」も対象となり、さらに「トラブル被害対応補償」と「地震・噴火・津波補償」も適用されます。

以上が各社の特徴ですが「高等学校PTA連合会の保険」の魅力は、行動範囲や交友関係が広がり、学校生活で想定されるさまざまなリスクを総合的にカバーできる点に尽きるのではないでしょうか。そういう意味で答えを出すなら、本当に「自転車で他人をケガさせたとき」と「学校から貸与されたタブレットの補償」だけでよいという方のみ検討の価値があるといえます。

加入前に「必ず」確認すること

すでに学校がタブレットの保険に加入しているケース

学校が保険の契約者となり、配布するiPadへ「動産総合保険」というものに加入している場合があります。学校自らが所有する動産へかける保険で、各シリアルナンバーを保険会社へ届け出し、壊れたときには時価額を上限に修理費用が補償されます。新価特約がついていると、再調達費用（新価補償）まで対応できます。

各学校や都道府県での規定

これまでは、通常の使用による毀損および不注意による毀損、紛失、盗難などが起きた際の原状復旧に要する費用については、生徒の責任が免れる。
ただし毀損、紛失、盗難が、故意または重大な過失によるものと認められる場合には、利用者（保護者）が原状復旧に要する費用を負担する、という規定が一般的でした。

つまり、生徒の過失（うっかりミス）なら、各学校や都道府県（教育委員会）で、費用を補填しますよ、という規定でした。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、各学校のタブレット貸与が一気に進み、タブレットの破損件数が増え、費用負担を抑えるため、方針を変更する都道府県が増えているようです。

具体的には、悪意がなくても学校から貸与しているタブレットをうっかり壊してしまった場合は、利用者（保護者）で修理費用を負担してください、という内容です。最新の規定を学校へ確認しましょう。

自転車運転への備え

高等学校PTA連合会の保険は、通称「自転車保険」とも呼ばれています。自転車保険は、他人をケガさせてしまったときの備えになる「個人賠償責任補償」と、自分が運転中に転倒してケガをしたときに補償される「傷害保険」がセットになっている商品です。

自転車保険への加入が義務化されている地域では、学校へ保険証券写しの提出が必要になります。自動車保険や火災保険の特約でも代替えできるので、加入内容を確認してみましょう。重複しても問題ありませんが、保険金の二重取りはできません。

・自転車の運転で、他人をケガさせてしまう⇒自動車保険や火災保険の個人賠償責任補償特約
・自転車の運転中に転倒して、自分がケガをする⇒自動車保険の人身傷害車外補償特約、自転車事故特約、傷害保険など
・学校生活でのケガ⇒県民共済や医療保険、傷害保険など

また「独立行政法人日本スポーツ振興センター災害共済給付制度」は、任意加入ですが入学時に加入している可能性があります。合わせて確認しておきましょう。補償内容は学校の管理下で突発的なアクシデントについて、費用負担が5,000円を超えた分での対応となります。詳しくは、下記をご確認ください。

まとめ

高等学校PTA連合会の保険は、自動車保険や火災保険、医療保険などと重複する部分もありますが、学生生活には欠かせない貸与されるタブレットやスマホなどの所持品の損害にも対応できる点が優れています。お手頃な掛け金なので、一度の請求で3年間の掛け金以上の保険金がもらえるケースも想定されます。加入するのであれば、目的を明確にしたうえで商品を選びましょう。