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千葉県豪雨から考える、水没した車と浸水した家の保険

お金のはなし

2026年8月、千葉県では記録的な豪雨により道路が冠水し、多くの車両や住宅が浸水被害を受けました。被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。

豪雨の映像を見て、次のように思った人もいるのではないでしょうか。

「自動車保険に入っていれば、水没した車も補償されるのでは?」
「自宅の駐車場で水没した車なら、火災保険が使えるのでは?」
「火災保険に入っているから、床上浸水も補償されるはず」


ところが、いずれも保険証券の中身を確認しなければ、補償されるかどうかは分かりません。

今回の豪雨を通じて特にお伝えしたいのは、次の違いです。

  • 車については、「自動車保険に入っているか」ではなく「車両保険まで付いているか」
  • 家については、「火災保険に入っているか」ではなく「水災補償を外していないか」

同じ豪雨による被害でも、車と家では確認する保険と補償が異なります。

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水没した車と浸水した家では、使う保険が違う

最初に、基本的な関係を整理しておきましょう。

被害を受けたもの確認する保険必要な補償
自家用車自動車保険車両保険
建物の床・壁・設備火災保険建物の水災補償
家具・家電・衣類火災保険家財の水災補償
車内の荷物自動車保険など車内携行品などの特約

「何が原因で壊れたか」だけではなく、「何が被害を受けたか」です。

自宅の駐車場や車庫に置いていた車であっても、一般に火災保険の家財には含まれません。水没した車について確認するのは、火災保険ではなく、自動車保険の車両保険です。

「自動車保険」と「車両保険」は同じではない

特に注意していただきたいのが、自動車保険と車両保険の違いです。

「自動車保険に入っている」と聞くと、自分の車も当然補償されるように感じるかもしれません。

しかし、自動車保険は一つの補償の名前ではありません。複数の補償を組み合わせた保険の総称です。

自動車保険の主な補償守るもの
対人賠償保険事故で相手を死傷させた場合
対物賠償保険相手の車や物を壊した場合
人身傷害保険など運転者や同乗者が死傷した場合
車両保険自分の車が壊れた場合

自賠責保険や対人・対物賠償保険だけでは、水没した自分の車は補償されません。

豪雨による水没で自分の車を補償するのは、任意の自動車保険の中にある「車両保険」です。

したがって、

「自動車保険に入っているから大丈夫」

ではなく、

「自動車保険に車両保険まで付いているか」

を確認する必要があります。

車両保険が付いていれば、限定型でも洪水は補償される

車両保険には、一般型、ワイド型などと呼ばれる補償範囲の広いタイプと、限定型、エコノミー型などと呼ばれる補償範囲を限定したタイプがあります。

「限定型では、豪雨による水没も補償されないのでは?」と思われるかもしれません。

しかし、一般的な個人向け自動車保険では、車両保険が付いていれば、一般型・限定型のどちらでも、台風・洪水・高潮などによる車両の損害は補償対象です。

主な事故・災害一般型・ワイド型限定型・エコノミー型
台風・洪水・高潮による水没
火災・爆発・盗難
電柱やガードレールへの衝突×
墜落・転覆×
地震・噴火・津波原則×原則×

一般型と限定型の主な違いは、電柱やガードレールへの衝突、墜落・転覆などの単独事故を補償するかどうかです。

豪雨による水没については、

「一般型か限定型か」ではなく、「車両保険そのものが付いているか」

が最初の確認ポイントになります。

火災保険では「水災だけを外す」という選択が行われることがあります。一方、自動車保険では、車両保険を付けたうえで、水災だけを個別に外すという契約は一般的ではありません。

ただし、保険会社や商品によって名称や補償範囲が異なることがあります。最終的には保険証券や契約内容を確認してください。

また、地震による津波で車が水没した場合は、通常の車両保険では原則として補償されません。台風や豪雨による洪水と、地震による津波は分けて考える必要があります。

補償対象でも、購入価格がそのまま支払われるわけではない

車両保険が付いていれば、洪水による水没は通常、補償対象になります。

ただし、「補償対象になること」と「車を購入したときの金額が全額支払われること」は別です。

車両保険では、契約する車と同じ車種・年式・仕様で、同程度の使用状態にある車の市場販売価格相当額をもとに、車両保険金額を設定します。

例えば、数年前に300万円で購入した車であっても、現在の車両保険金額が100万円であれば、全損時の基本的な支払限度額は100万円です。

修理できる場合は、一般に修理費から免責金額、いわゆる自己負担額を差し引いて保険金が支払われます。修理できない場合や、修理費が車両保険金額以上になる場合は、全損として扱われることがあります。

新車特約や車両全損時復旧費用特約などを付けている場合は、一定の条件を満たすことで、通常の車両保険金額を超える買替費用が補償されることもあります。

つまり、車両保険では次の二段階で考える必要があります。

  1. 車両保険が付いているか
  2. いくらまで補償される契約になっているか

「車両保険があるから、同じ新車を買い直せる」とは限りません。

火災保険は、水災を外している可能性がある

住宅についても、「火災保険に入っているから、豪雨による浸水も大丈夫」とは限りません。

火災保険は名前に「火災」と付いていますが、火事だけを補償する保険ではありません。契約内容によって、落雷、風災、雹災、雪災、水災、盗難など、さまざまな自然災害や日常損害を補償します。

ただし、火災保険では、保険料を抑えるためや建物の立地などを考慮して、契約時に水災補償を外しているケースがあります。

火災保険の契約はあっても、水災補償は外されていたというケースは決して珍しくありません。

そのため、住宅の浸水被害では、

「火災保険に入っているか」ではなく、「水災補償が付いているか」

を確認する必要があります。

建物と家財も分けて確認する

火災保険では、建物と家財は別々の保険対象です。

例えば、豪雨によって1階が床上浸水した場合でも、被害を受けたものによって使う補償が分かれます。

  • 床・壁・キッチン・浴室など:建物の水災補償
  • 冷蔵庫・テレビ・家具・衣類など:家財の水災補償
  • 車庫に置いていた自動車:自動車保険の車両保険

建物だけを保険の対象にしている場合、冷蔵庫や家具などの家財は補償されない可能性があります。

また、火災保険に水災補償があっても、すべての浸水被害が無条件で支払われるわけではありません。

商品によっては、次のような支払条件があります。

  • 床上浸水となった場合
  • 地盤面から一定の高さを超えて浸水した場合
  • 建物や家財に一定割合以上の損害が発生した場合

なお、給排水設備の事故や上階からの漏水などを補償する「水ぬれ」と、洪水・高潮・土砂崩れなどを補償する「水災」は別の補償です。名前が似ていますが、同じものではありません。

自動車保険は時価、火災保険は新価が基本

車と住宅では、保険金額を決める考え方にも違いがあります。

車両保険火災保険
主な評価基準市場販売価格相当額をもとに設定再調達価額を基準とする契約が主流
簡単にいえば同程度の中古車を購入するための価格同等の建物を建て直す、家財を買い直すための価格
注意点購入時の金額がそのまま支払われるわけではない不動産の売買価格や土地の価格が支払われるわけではない

一般には「自動車保険は時価、火災保険は新価」と説明されます。

ただし、車両保険の「時価」は、単純な下取り価格という意味ではありません。契約時の市場販売価格相当額をもとに設定した車両保険金額が支払限度額になります。

一方、現在の火災保険では、同等の建物を建て直したり、同等の家財を買い直したりするために必要な再調達価額、いわゆる新価を基準とする契約が主流です。

もっとも、火災保険も常に新築費用や新品購入費用が全額支払われるわけではありません。実際の損害額、保険金額、免責金額、水災の支払条件などによって支払額が決まります。古い契約では、時価を基準としている場合もあります。

同じ自宅で起きた水害でも、三つに分かれる

具体例で考えてみましょう。

豪雨によって自宅が床上浸水し、1階の床と冷蔵庫、自宅の車庫に置いていた車が水没したとします。

この場合、確認する保険は次のように分かれます。

被害確認する補償
1階の床や壁火災保険の「建物+水災」
冷蔵庫や家具火災保険の「家財+水災」
車庫の自動車自動車保険の「車両保険」

原因はすべて同じ豪雨ですが、一つの保険ですべてを補償するわけではありません。

特に間違えやすいのが、自宅の敷地内にある車です。

車が自宅の駐車場や車庫に置かれていても、火災保険の家財として補償されるわけではありません。車の水没は、自動車保険の車両保険で確認します。

車が水没しても、すぐにエンジンをかけない

実際に車が水没した場合は、保険の確認よりも先に身の安全を確保してください。

水が引いた後も、浸水した車のエンジンをかけてはいけません。故障を拡大させるだけでなく、感電や車両火災につながる危険があります。

安全を確保したうえで、次のように対応します。

  1. 車や周囲の浸水状況を写真で残す
  2. 保険会社または保険代理店へ連絡する
  3. ロードサービスや販売店に車両の移動を相談する
  4. 保険会社へ確認する前に修理や廃車を進めない
  5. レッカー代などの領収書を保管する

住宅についても、片付けや修理を始める前に、建物全体、浸水した高さ、壊れた家財などを写真に残しておくことが大切です。

豪雨の前に確認しておきたい保険証券

災害が起きてから初めて補償内容を確認するのではなく、平時に保険証券を確認しておきましょう。

自動車保険では、次の項目を確認します。

  • 車両保険が付いているか
  • 車両保険金額はいくらか
  • 免責金額はいくらか
  • 新車特約や買替費用に関する特約があるか
  • レッカーや代車費用が補償されるか
  • 地震・噴火・津波に関する特約があるか

火災保険では、次の項目を確認します。

  • 水災補償を外していないか
  • 建物と家財の両方を契約しているか
  • 水災の支払条件はどうなっているか
  • 水災の支払限度額が縮小されていないか
  • 免責金額はいくらか
  • 保険金額が現在の再建築・再購入費用に合っているか

「保険に入っている」だけでは分からない

今回の千葉県豪雨では、同じ地域で車の水没と住宅の浸水が同時に発生しました。

しかし、保険では「豪雨による被害」と一括りにはできません。

車については、「自動車保険に入っているか」ではなく、「自分の車を守る車両保険まで付いているか」を確認します。車両保険が付いていれば、一般型・限定型を問わず、洪水による水没は通常、補償対象です。

一方、住宅については、火災保険に入っていても、契約時に水災補償を外している可能性があります。さらに、建物と家財のどちらを保険の対象としているか、支払条件や限度額がどうなっているかも確認しなければなりません。

大切なのは、保険の名前だけで安心しないことです。

車は「車両保険が付いているか」。
家は「水災補償を外していないか」。

次の大雨が来る前に、一度、保険証券や契約内容を確認してみてください。分からない場合は、契約している保険会社や保険代理店に問い合わせておくと安心です。

参考資料

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