PR

クレジットカード明細をPythonで分析してみた

授業のヒント

クレジットカードの明細は、単なる「支払いの記録」ではありません。
少し見方を変えると、そこには私たちの暮らし方、季節ごとの支出の変化、そして消費行動のクセが表れています。

家計管理というと、どうしても「節約」や「無駄遣いを減らす」という話になりがちです。
もちろんそれも大切ですが、金融教育の視点では、もう一歩進めて「なぜその支出が発生しているのか」「どの支出は自分でコントロールできるのか」を考えることが重要です。

今回は、クレジットカード明細をPythonで読み込み、電気代とガス代の推移を分析してみました。
題材として取り上げるのは、中部電力と東邦ガスの月別利用金額です。

スポンサーリンク

クレジットカード明細は「生活データ」である

クレジットカード明細には、利用日、利用先、金額などが記録されています。
これを月別や利用先別に集計すると、家計簿を手入力しなくても、ある程度の支出傾向を把握できます。

たとえば、毎月発生する電気代・ガス代・通信費・サブスクリプションなどは、カード明細から見つけやすい項目です。
特に光熱費は、季節や気温の影響を受けやすいため、金融教育や探究学習の題材としても扱いやすいと感じます。

ただし、実際の明細データには個人情報が含まれます。
氏名、住所、カード番号はもちろん、利用店舗名から生活圏が推測できる場合もあります。
授業で扱う場合は、必ず架空データや加工済みデータを使う必要があります。

Pythonで行った分析の流れ

今回の分析では、まずクレジットカード明細のCSVデータをPythonで読み込みました。
そのうえで、利用日を日付データとして扱えるようにし、利用金額を数値に変換しました。

次に、利用先の名称から「中部電力」「東邦ガス」を抽出し、月別に集計しました。
さらに、月別平均気温のデータと組み合わせることで、光熱費が季節によってどのように変化しているかを確認しました。

細かなコードを書く力がなくても、Google Colabで指示をすれば、明細データの集計やグラフ化は十分に可能です。
むしろ大切なのは、コードそのものよりも「何を見たいのか」という問いを持つことです。

電気代とガス代の月別推移を見る

まず、中部電力と東邦ガスの月別利用金額を折れ線グラフで確認しました。

グラフを見ると、電気代は夏と冬に大きく上がっています。
特に2026年1月は中部電力の利用金額が大きく増えており、冬場の暖房利用や在宅時間の影響が考えられます。

一方で、東邦ガスも冬に向けて増加しています。
ガス代は給湯や暖房の利用と関係しやすいため、気温が下がる時期に支出が増えやすいと考えられます。

このように、月別に並べるだけでも、「いつ支出が増えるのか」が見えてきます。
家計改善を考えるとき、単に金額の大きさを見るだけでなく、季節要因や生活行動と合わせて考えることが大切です。

気温と光熱費を重ねて考える

次に、電気代とガス代の合計に、月別平均気温を重ねてみました。

このグラフでは、棒グラフが電気代とガス代、折れ線が月別平均気温を表しています。

特徴的なのは、気温が高い8月に光熱費が増え、気温が低い1月にも大きく増えている点です。
夏は冷房、冬は暖房や給湯によって、光熱費が上がりやすいことが読み取れます。

特に2026年1月は、合計で41,371円と最も高くなっています。
平均気温が低い時期には、電気とガスの両方に負担がかかることがわかります。

ここで大切なのは、「気温が低いから必ず光熱費が上がる」と単純に決めつけないことです。
家族構成、住宅の断熱性能、在宅時間、契約プラン、使用している暖房器具など、さまざまな要因が関係します。

データ分析では、グラフを見て終わりではなく、「なぜそうなったのか」という仮説を立てることが重要です。

【コラム】気温からガス代を予測してみる

グラフを見るだけでも傾向はつかめますが、線形回帰を使うと「気温が1℃変わると、支出がどのくらい変化するのか」を数値で表すことができます。

ここから少し発展して、月別平均気温とガス代の関係を、Pythonで線形回帰してみました。

線形回帰とは、ざっくり言えば「あるデータと別のデータの関係を、一本の直線で表す方法」です。
今回は、横軸に月別平均気温、縦軸にガス代を置き、「気温が変わるとガス代はどのくらい変化するのか」を確認しました。

分析結果を見ると、回帰直線の傾きは -217.5 でした。
これは、気温が1℃上がるとガス代は約217円下がる傾向がある、言い換えると、気温が1℃下がるとガス代は約217円上がる傾向がある、という意味です。

また、決定係数 R² は 0.747 でした。
R²は、どのくらいデータのばらつきを説明できているかを示す指標です。今回の場合、ガス代の変動のおよそ75%を、平均気温によって説明できていると考えることができます。

もちろん、ガス代は気温だけで決まるわけではありません。
家族の在宅時間、給湯の使い方、住宅の断熱性能、契約プラン、基本料金の影響など、さまざまな要因が関係します。
また、今回のデータは12か月分なので、あくまで家庭内データを使った簡易的な分析です。

それでも、クレジットカード明細と気温データを組み合わせるだけで、
「寒くなると、どのくらい家計負担が増えやすいのか」
を数字で考えられるようになります。

これは、金融教育の授業でも使いやすい題材です。
生徒にとって身近な光熱費を入口に、データ分析、家計管理、エネルギー消費、環境問題までつなげることができます。

授業で使うなら、どんな問いが立てられるか

この分析は、金融教育の授業にも応用できます。

たとえば、次のような問いを生徒に投げかけることができます。

「光熱費が高くなる月には、どのような生活行動があるだろうか」
「電気代とガス代では、季節による変化に違いがあるだろうか」
「家庭でできる省エネ行動には、どのようなものがあるだろうか」
「支出を減らすことと、快適に暮らすことは両立できるだろうか」
「家計データを分析するとき、個人情報にはどのように配慮すべきだろうか」

このような問いにすると、単なる節約の授業ではなく、データ活用、消費行動、環境、家計管理を横断的に学ぶことができます。

また、SDGsの視点からは、エネルギー消費や家計負担の問題にもつなげられます。
金融教育は、お金の知識だけでなく、暮らしや社会とのつながりを考える学びでもあります。

Python分析のよさはすぐに「見える化」できること

家計の支出は、なんとなく多いと感じていても、具体的にどの月に、どの項目が増えているのかまでは見えにくいものです。

Pythonを使うと、手軽に短時間でカード明細を月別・項目別に集計し、グラフで視覚的に確認できます。
すると、「思っていたより冬の光熱費が大きい」「夏よりも1月の負担が重い」「ガス代より電気代の変動が大きい」といった気づきが得られます。

この気づきがあるからこそ、次の行動につながります。
契約プランを見直すのか、使用量を確認するのか、省エネ家電を検討するのか。
データは、家計を責めるためではなく、より納得できる選択をするために使うものです。

まとめ

クレジットカード明細は、家計管理だけでなく、金融教育の教材としても活用できます。
特に光熱費のように、季節や生活行動と結びつきやすい支出は、生徒にとっても身近なテーマです。

今回の分析では、Pythonを使って電気代とガス代を月別に集計し、さらに平均気温と比較しました。
その結果、夏と冬に光熱費が増えやすいこと、特に冬場は電気代・ガス代の両方が家計に影響することが見えてきました。

大切なのは、支出をただ「多い・少ない」で判断することではありません。
なぜ増えたのか。
どの支出は必要なのか。
どこに見直しの余地があるのか。

こうした問いを立てることが、金融教育の第一歩だと思います。
データ分析は、暮らしを責めるためではなく、暮らしをよりよく選び直すための道具として使っていきたいものです。

タイトルとURLをコピーしました