初任給のイメージを身近な中学生に聞いてみると「50万円くらい?」という答えが返ってきました。
厚生労働省の令和元年賃金構造基本統計調査によると、大学卒で210,200円です。中学生の抱くイメージと現実には大きなギャップがありそうですね。
ちなみに、アメリカの初任給はなんと平均50万円とのこと。働く(=活躍する)場所&ステージによって、稼げるお金は大きく異なります。
この記事では「給与」をテーマにしたお金の授業アイデアをご紹介します。身近な話から将来について考えるきっかけにしましょう。
<授業のポイント>
収入に影響を及ぼす要素は、
・国(働く場所)
・学歴、会社の規模、業界
・働き方(経営者、個人事業主、会社員&公務員)
(注:正しい答えを求めたり、他者と比べる場ではありません)
【SDGs】ゴール①、④、⑤、⑧、⑩
初任給は初めてもらえる「給与」のこと
初任給は、会社に入って最初にもらえる「給与」のことです。給与は基本給と各種手当を加えた金額。いっぽう、実際に口座へ振り込まれる金額は「手取り額」といい、給与額よりも少なくなります。
「給与」とは支給額に相当するもの
支給額には、基本給に加えて「通勤手当」や「住居手当」などの各種手当や残業代を含んだ合計額も含まれます。最近は、会社ごとにユニークな手当も儲けられていますので、各社の募集要項を確認してみてください。
「手取り額」とは給与から源泉徴収された後に振り込まれる金額
自分の口座へ振り込まれるお金は、社会保険料や所得税、雇用保険料などが差し引かれた後の金額です。
・社会保険料→健康保険や厚生年金など
健康保険とは:病気やケガをしたときなどに、医療費を負担してもらえる制度
厚生年金とは:65歳になったとき、病気やケガで働けなくなるもしくは、死亡したときにお金がもらえる制度
・所得税→会社からもらう給与にかかる税金
・雇用保険→仕事を辞めたときやスキルアップに備えるための制度
大卒平均である21万円の給与なら、手取り額は21万円×80%=16.8万円程度となります。
およそ給与の8割程度をイメージしておきましょう。
会社で財形貯蓄や確定拠出年金制度などがあり、拠出金を給与天引きしていると、さらに手取り額は少なくなります。
給与は「学歴」「会社の規模」「業界」によって違う
学歴については、最終学歴が後になるほど、給与が高くなります。
ただし、職種によって適切な最終学歴があるのでその点は、考慮しておきましょう。
給与額 | 前年対比 | |
大学院修士課程修了 | 238,900円 | 0.1%増 |
大学卒 | 210,200円 | 1.7%増 |
高専・短大卒 | 183,900円 | 1.4%増 |
高校卒 | 167,400円 | 1.4%増 |
企業の規模については、大きくなるほどたくさん給与がもらえる傾向です。
※大企業(常用労働者1,000人以上)、中企業(同100~999人)、小企業(同10~99人)
大学院修士課程修了 | 大学士卒 | 高専・短大卒 | 高校卒 | |
大企業 | 242,000円 | 213,100円 | 185,600円 | 168,500円 |
中企業 | 232,100円 | 208,600円 | 183,600円 | 166,100円 |
小企業 | 229,300円 | 203,900円 | 183,200円 | 168,600円 |
大卒初任給の高い業界を上位からみていくと、1位は学術研究、専門・技術サービス業で227,200円、2位に情報通信業の218,100円が続きます。
大学院修士課程修了 | 大学卒 | 高専・短大卒 | 高校卒 | |
学術研究 専門・サービス業 | 245,500円 | 227,200円 | 180,000円 | 167,000円 |
情報通信業 | 244,000円 | 218,100円 | 190,200円 | 171,000円 |
建設業 | 245,300円 | 216,700円 | 189,400円 | 176,100円 |
卸売・小売業 | 235,700円 | 211,000円 | 180,500円 | 168,400円 |
教育・学習支援業 | 242,300円 | 209,400円 | 183,100円 | 168,100円 |
金融・保険業 | 246,700円 | 207,300円 | 172,300円 | 158,500円 |
医療・福祉 | 209,100円 | 206,900円 | 189,400円 | 165,400円 |
製造業 | 235,800円 | 206,600円 | 183,200円 | 166,300円 |
サービス業 | 229,300円 | 205,300円 | 176,900円 | 167,200円 |
実は初任給では、業界ごとに大きな違いはありません。
しかし、「令和元年分民間給与実態統計調査結果」の平均給与によると、上位よりインフラ関連の電気・ガ ス・熱供給・水道業が824万円、金融業・保険業で627万円と並びます。
つまり、最初は同じくらいの給与を同級生がもらっていても、5年、10年経つと業界ごとに差が広がってくるということです。
仕事を始めるうえで、初任給は大事な判断基準です。しかし、成果を認めてくれる社風であること、転職や独立、起業しても役立つスキルを学べること、人脈を作れる環境があることなども非常に大切です。
日本の水準は、G7のなかで6番目
日本はGDPにおいて、アメリカ、中国についで世界3位です。
※内閣府発表令和元年(2019年)時点
しかし、初任給はG7(日本、アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア)のなかだけでも6番目と低水準。
GDP(米ドル) | 世界に占める比率(%) | |
アメリカ | 21,433 | 24.4 |
中国 | 14,342 | 16.3 |
日本 | 5,148 | 5.9 |
ドイツ | 3,881 | 4.4 |
インド | 2,875 | 3.3 |
イギリス | 2,826 | 3.2 |
フランス | 2,715 | 3.1 |
イタリア | 2,003 | 2.3 |
カナダ | 1,736 | 2.0 |
例えば、「アマゾンジャパン」は月給363,334円以上、+残業代(2019年度実績)「ファーウェイ・ジャパン」は学士卒月給40.1万円(月45時間分の固定残業代含む)で採用を行っています。(※2021年7月9日時点)(出典:マイナビ国際派就職)
外資系の日本法人では国内の平均初任給を上回る水準で、新卒募集をしています。
GDPは、国が何十年も前からずっと取り組んできた成果が数値となって現れます。
国民がよりよい教育を受け、政府が社会に投資をし、研究開発できる環境づくりにつなげることがとても大切です。人やモノが充実してこそ、優れた商品やサービスがたくさん生み出されます。
先進国のなかでも日本の少子高齢化は、猛スピードで進んでいます。
今後も諸外国のなかで経済力を保っていくためには、将来にわたって優秀な若手人材を育成できるしくみと、活躍できる場所が国内にたくさん必要です。
官民一体はもちろん、地域社会も一緒になって考えていかなければならない重要な課題と考えます。
まとめ
今回は初任給について、学歴や会社の規模、業界による違いをまとめました。
日本のなかではそれほど違いはありませんが、国(働く場所)によっては大きく異なります。日本ではあり得ない、初任給50万円がアメリカでは実現できます。
一人ひとりの感じたことをぜひ授業で共有してみてください。
「給与」に関する実践ワーク
質問例①:やりたい仕事があれば、どれに当てはまりますか?
【ポイント】
子どもたちがイメージしている「業界」や「働く場所」をシェアします。日本でしか出来ない仕事か?海外でもできる仕事か?投げかけてみましょう!
質問例②:やりたい仕事に就くためにどうすればいいですか?
【ポイント】
学歴が重視される職種や超実力主義の仕事などさまざまです。学校生活や習い事など今取り組んでいることとの関連性に気づいてもらいましょう。将来のために、今何をしておくとよいかを考えてもらいます。
質問例③:会社の社長やフリーランスの場合、給与はいくら?
【ポイント】
給与が保証されてない職種です。※フリーランス(=個人事業主)
最近では、会社員と複業されている人も増えてきました。
売上、利益次第でたくさんの報酬を貰える可能性があります。いくら欲しいのか聞いてみてください。
※私の肌感覚ですが、地方の中小企業経営者は月額30~150万円くらいのレンジに集中していることが多いです。
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