SDGsに関する活動を学校生活で取り入れるにあたって「何から始めればよいかわからない」「取り組んでいるけど、実感がわかない」など、感じたことありませんか?
悩んでいるあなたは、ぜひこの記事に載っている国内の問題へ目を向けてみると、もっと身近なはなしとしてSDGsを授業に取り込めます。
今回は、ファイナンシャル・プランナー歴15年&金融業界に12年携わった経験をふまえて、金融教育の視点から簡単に授業で取り入れられるポイントをお伝えします。
対象となる科目
科目にこだわる必要はありません。あえていうなら、社会科・家庭科・総合学習のあたりでしょうか。まずは普段通りの授業で出てくるキーワードをヒントに、SDGsに絡めて生徒たちと考えを共有することから始めてみてはいかがでしょうか。
例えば、社会科で「男女雇用機会均等法」が出てきたら、ジェンダー平等(SDGsゴール5)についてみんなで意見を共有してみるとかです。
時間がない場合は、朝や帰りの学活などでも構いません。5分でも10分でもその日のニュースをネタに、一人ひとりが自分なりに社会とのつながりを考えられる「簡単なきかっけ」をぜひ提供してみてください。
授業の開催頻度
SDGsに関する金融教育を取り入れる頻度は、主に1日で完結する単発授業と複数回に分けてより理解を深める継続授業の2通りがあります。
単発授業は1コマもしくは、2コマくらいの時間で広く浅くワークシートを使って学習を完結します。
例えば、将来のライフプランを描きながら、お金の使い方と働き方に向き合います。授業終了後には、一人ひとりが様々な気付きを得ることが出来ます。
SDGsの5つのゴールにつながる内容(貧困率の解消/福祉の充実/質の高い教育/ジェンダー平等/働きがいと経済成長)を盛り込みます。
継続授業の場合は、年間を通して複数回開催するパターンと、毎年各学年で習熟度に応じて受け続ける方法があります。
年間を通して授業を進めるなら、各学校の判断で何年生が適正かを決めます。おすすめは中学2年生です。高校受験まではまだ時間があり、下級生が入学したタイミングで意識に変化が現れる時期だからです。
いっぽう学年を横断するなら、各教科の学習内容や生徒自身の成長に合わせたカリキュラムを準備すると理解が深まります。
授業で使えるSDGs
途上国にフォーカスされがちなSDGsですが、日本国内においても「所得格差の問題」や「長引く経済の低迷」などさまざまな問題があります。
さらに先進国のなかでも日本と諸外国を比べると、ずいぶんと遅れをとっている点もあげられます。
これらの問題について金融教育の視点から10年、20年後日本を担う中学生にぜひ伝えて、一緒に考えてほしいポイントを5つ解説します。
①貧困をなくそう
まずは、日本国内における所得格差の問題です。
厚生労働省の国民生活基礎調査の概況(2019年)によると、相対的貧困率がおよそ15%と報告されています。
世帯年収においては、200万円以下が相対的に貧困と分類されています。ざっくり計算すると、国民1億2,000万人のうち、1,800人に相当。
今日明日の食べるものに困るレベルではありませんが、平均の生活費31万円(平成26年全国消費実態調査)からみると、解決すべき問題です。将来の子育てや消費経済にも大きく影響します。
この問題について金融教育で解決を目指すなら、まず一人ひとりが生きていくためにいくら必要か把握をします。
さらにお金を使うことだけでなく、稼ぐこと、増やすことの3つの視点で、捉えることがポイントです。
稼ぐことについては、業界・職種・働き方によって、得られる収入が異なります。この考え方はキャリア教育にもつながります。
思い描くライフプランをかなえるために、働き方を再検討する必要性が出てくるかもしれません。
世界のなかで日本を捉えてみましょう。
諸外国と賃金について比べると、日本は調査対象国で22番目です。(OECD平均賃金統計2020年)
ちなみに、1位がアメリカ、2位がアイスランド、3位がルクセンブルクと続いています。上位13カ国が、OECDの平均値よりたくさん賃金が支払われています。
あなたが昭和生まれなら、この結果をみて愕然とするかもしれませんね。以前は、日本はとても豊かな国と教わりました。中学生の皆さんは、この結果をどう捉え、自分に何ができるかを考えてみましょう。
同じ職種でも働く国によっては、年収が違うことも知っておきましょう。
さらに稼いだお金を増やす手段として、お金に働いてもらう必要があります。これはまさに「投資教育」へとつながります。
実践ワーク
①あなたがやってみたい仕事の年収はいくらですか?
②やってみたい仕事は経営者、フリーランス、会社員など異なった働き方でもできますか?
③上記の仕事で得たスキルは他の業界や海外でも活かせすことができますか?
③すべての人に健康と福祉を
2つ目の課題は、少子高齢化による社会保障費の増大です。
日本における社会保障問題の特徴は、年金・医療が大半を占めている点です。これらの財源は、国民が負担する保険料と税金など。
実践ワーク
①年金制度と医療保険制度を知っておきましょう
厚生労働省:教えて!公的年金制度 公的年金制度はどのような仕組みなの?
厚生労働省:我が国の医療保険について
②それぞれ国民の負担割合や受給要件の変遷を確認しましょう
③現在の社会保障制度の課題について意見を共有しましょう
福祉を推進すること、つまり社会保障制度の充実は、国の財政が健全であり続けることが必要条件です。そのためには、国民一人ひとりが最大限力を発揮し、財やサービスなどの付加価値(GDP)をより多く生み出すことが重要です。経済成長が続けば、国の財政に余裕が生まれ、福祉に充てる予算を増やせます。
④質の高い教育をみんなに
社会科の新しい学習指導要領では冒頭に「グローバル化」「主体的」というキーワードが掲げられています。金融教育において、具体的に必要なことは「お金」のことを考える場をしっかり設けていくことです。
社会に出てから「お金」のことをちゃんと勉強しておきたかった、と思ったことはありませんか?私たち大人が学校で学べなかったことをしっかり学習しておくとよいでしょう。
<金融教育で扱う主な項目>
ライフプランとキャリア形成
3つの働き方による違い
貯金と銀行について
社会保障制度と税金
投資と保険
ローンと契約
職種によって求められる技術的、コミュニケーション的スキルは異なります。自分らしい働き方を生涯続けられるように、さまざまな雇用形態についても考えるとよいでしょう。
終身雇用がなくなりつつある現代において、転職や起業も視野に入れながら学習を進めましょう。
⑤ジェンダー平等を実現しよう
ジェンダーについては、日本の常識は世界の非常識といえるかもしれません。
日本は2025年までに、女性の占める割合を民間企業の管理職で30%、国会議員では35%を目標にしています。しかし、西欧諸国ではアメリカ40.7%、オーストラリア38.7%、スウェーデン38.6%、アジアではフィリピン52.7%、シンガポール36.4%と、2025年の日本の目標を既に多くの国が達成しています。
さまざまな働き方を考える上で、女性の参画、および平等なリーダーシップ機会を確保することはとても重要です。将来最適な職業選択につなげられるよう日本と世界の現状を確認しましょう。
これまでの既成概念を取り払い、新しい時代を切り開くことを目指します。
私たち大人よりも、中学生の方が柔軟な考えをもっていることが多いですから、一緒に学ぶような環境が望ましいと思われます。
将来働くかもしれない業界や組織は、女性が仕事をしやすい環境かどうかを考える機会を設けましょう。また同じ職種でも海外のほうが働きやすい、評価されやすいなどの可能性があるかもしれません。
実践ワーク
①将来、働くかもしれない業界について調べてみましょう。
内閣府:男女共同参画局
②女性が働きやすい、活躍しやすい職場を考えてみましょう。
③なぜ日本は諸外国と比べて、女性管理職比率が低いかを考えてみましょう。
⑧働きがいも経済成長も
日本の経済は20年以上停滞しています。GDPにおいてはかつて日本は、世界第2位でした。現在3位ですが、4位以下への転落も間近にせまっている状況です。
まずはGDPの概要を理解し、その上で一人ひとりが自立して社会を担っていくことの重要性を考えてみましょう。
GDPとは
引用元:OECD東京センター ホームページ 主要統計より
ある国で財・サービスの生産を通じて一定期間内に生み出された付加価値を測定する標準的な尺度です。したがって、その生産で得られた所得を測定すると同時に、最終財・サービスに対する支出総額(輸出を差し引く)を測定するものでもあります。
実践ワーク
①GDPが少ないと国内にどういう問題が起こりますか?
平成27年国土交通白書 第1節 我が国経済とこれを取り巻く環境
②興味がある業界で注目されている企業やサービスを共有しましょう。
<SDGs目標8 働きがいも経済成長も>
引用:SDGs(総務省指標仮訳)
生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する。
まとめ
SDGsを簡単に取り組むコツは、日頃からのニュースや暮らしの中での疑問がヒントになります。
日本は先進国といわれていますが「長引く経済の低迷」から始まり、さまざまな諸問題が浮き彫りになっています。
金融教育は「お金のはなし」だけが目的ではありません。社会とのつながりへ目を向けることによって、自らのキャリアについて学ぶことが出来ます。選ぶ働き方で所得が決まり、生涯使えるお金が決まってしまうことも現実です。
Society5.0の未来社会へ向けて、環境が目まぐるしく、変化しています。私たち大人は、さらに想像以上の現実に直面するでしょう。
世界水準から遅れを取り始めている、日本の現状に触れながら、これからのお金とキャリアについていろいろ考えることはできます。
10,000人サポートプロジェクトは、「金融教育」☓「キャリア教育」を組み合わせることによって、一人ひとりが、具体的に収支のバランスを掴み、望ましいキャリア形成を自ら考えるきっかけを提供します。
教職員や教育委員会の方々からはもちろん、学習塾や民間企業のSDGsご担当者からのご相談もお受けいたします。お気軽にお問い合わせくださいね。