身近な中学生へ投資に対するイメージを聞いたところ「ギャンブルみたい」「お金が減ってしまうから怖い」との感想でした。
金融広報中央委員会が2015年度に調査したアンケートからも「何となく投資のイメージはもっているけど、本来の機能があまり理解されていない」ようですね。
・株価は毎日変動する(正答率64.6%)
出所:子どものくらしとお金に関する調査(第3回)2015年度
・インフレが進むと、同じお金で買えるものは少なくなる(同25.1%)
・企業は、株式や債券を発行して資金を調達する(同30.0%)
・100円を年利2%で1年間預けると、2円の利子がつく(同31.3%)
投資はギャンブルでも詐欺でもありません。理解ができれば何も恐れることはなく、むしろ知らないと自分の身や資産を守れなくなる可能性があります。
この記事では、これから投資の知識が必須となる世代に向けて、まず知ってもらいたい内容をギュッと凝縮していました。「授業のなかで投資に触れたい」ときにも使えるエッセンスを交えながらお伝えします。
そもそも投資とは
投資とは、将来のために「時間」と「お金」を使うことです。
勉強や習い事、スポーツ、読書などの「自分への投資」と、株式を買うことや会社を起こす「事業への投資」があります。
自分への投資では稼ぐ力を身につけることができ、事業への投資は資産を増やす(守る)ことができます。資産とは平たく言えば「お金」であり、具体的には現金、株式や債券、不動産などです。
投資とギャンブルの違い
「投資」は、社会のためになくてはならないものであり、無限の可能性を秘めています。投資が上手くいくかどうかは、自分の力量(知識や経験、情報など)次第である程度コントロールできます。
「ギャンブル」は、一定数のパイの取り合いとなり、勝者と敗者が明確になります。宝くじのように当たった人がもらえるお金は、集まった金額の範囲内にとどまります。また結果についても運に委ねるしかなく、自分では全くコントロールできません。
投資は人助け
投資したお金は「顧客や社会が抱えた問題を解決する」ことに使われます。投資を受けた企業は収益を上げ、そのお金でまた新たな投資をし、より良い商品やサービスを生み出していくことになります。起業家であれば、世の中の問題を解決するための事業を投資家に賛同してもらえれば、何億というお金を集めることができます。
例えば、誰もが知っているAmazonは1995年にインターネットで販売を開始して以来、より安く・よりたくさん・より早く・より便利を追求し続けています。価値観が多様化し、物があふれ、忙しい毎日を送っている地球上の人々のニーズと上手く合致しました。
そんなAmazonも投資家なくしては、ここまでのスピード、規模では成長できなかったわけです。今ではインターネット販売であげた収益をクラウドサービスの「AWS」へ投資をし、GoogleやMicrosoftとしのぎを削っています。日本の政府機関も、このサービスを利用し始めたことは話題になりましたね。
投資に必要な視点
世の中には「長期的な変化」と「短期的な動き」があり、特に長期的な変化をしっかりと捉えられることが投資には必要です。
「長期的な変化」とは、
・日本の人口は減っていくが、世界の総人口は増えていくこと。
・経済が成長すると、環境へ負担がかかること。
・長生きや働き方の変化により、新たな健康問題が課題になること。
・これらの問題を解決するために、政府の財政が悪化していくこと。
そして今、世界ではSDGsの取り組みが始まっていることも新たな長期的な変化の兆しです。
「短期的な動き」としては、
・なぜ円安傾向になっているのか?
・アメリカは金利を上げたけど、どうして日本は低いままなのか?
などです。
これらの動きに、関心を持つことがポイントですが、一喜一憂すると投資が上手くいかない可能性が高まります。あくまでも「長期的な変化」をベースに「短期的な動き」の背景について自ら情報を集め、考え、答えを探っていける力を養いましょう。(参考までに実践ワークを後述しました)
主な投資商品
具体的に投資する場合の主な金融商品を紹介します。
株式投資
企業へ出資をして、株主となります。毎年の業績に応じて配当金がもらえます。株価の値上がりによる売却益も期待できます。
債券投資
企業だけでなく政府、地方自治体などへお金を貸します。毎年の利子が受け取れ、期間が満了すると貸したお金が返ってきます。
不動産投資
不動産のオーナー(土地や建物の持ち主)となって、誰かに貸して家賃収入を得ます。
投資信託
ファンドという運用のプロへ株式、債券、不動産への投資を任せる商品です。
中学生でも投資が始められる
投資への理解を深めるには、実際に投資をやってみることが一番です。
未成年口座の開設であれば、中学生でも本人名義の口座が作れます。積立投資なら数百円から、外国株や海外のETF(上場している投資信託のこと)なら1万円以内の銘柄がたくさん選べます。
上述したAmazonは、1株130.75米ドル(2022年8月26日時点)で購入できます。
下記にほんの一例ですが、米国企業の株式を紹介します。銘柄は他にもいろいろありますので、興味があったらぜひ調べて見てくださいね。
note記事:「未成年口座への入金」で失敗したはなし楽天証券編
【1万円以下で買える米国株】 AT&T:17.89米ドル 日本で例えるなら、NTTのような通信会社 コカ・コーラ:63.12米ドル 超おなじみのコカ・コーラのメーカー 【3万円以下で買える米国株】 アルファベット:110.34米ドル Gooleを運営する会社 ウォルト・ディズニー:114.08米ドル みんな大好きディズニーの本家本元 Amazon:130.75米ドル 記事にも紹介したAmazon メタ・プラットフォームズ:161.78米ドル InstagramやFacebookを運営している会社 アップル:163.62米ドル スティーブ・ジョブズが立ち上げたiPhoneを生み出した会社 ※1株あたりの購入金額(2022年8月26日時点)
まとめ
投資は「世の中の問題を解決するための事業」に、時間とお金を使うことであり、ギャンブルではありません。投資をした人も投資をされた企業も利益を分かち合うことができます。
投資をするにあたっては長期的な変化をしっかりと捉え、個々のニーズにあった商品選びができるとよいでしょう。まずは少額からでもやってみることをお勧めします。
みんなで考える実践ワーク
課題例①:なぜ1年で21円も円安になったのでしょうか?
【ポイント】
・1年で21円の変動は過去と比べてどの程度なのか?1年毎に過去を振り返ってみましょう。
・直近半年内での大きな出来事は、アメリカが政策金利を引き上げたことです。
・政策金利の上げた背景には、物価の上昇や失業率が堅調なことがあげられます。
※正解は一つではありません。さまざまな要因が考えられます。意見や考えの共有し、関心を向けることがねらいです。
課題例②:アメリカと日本の金利上昇率の違いは、なぜ起こっているのでしょうか?
【ポイント】
・物価の上昇を抑えるための手段として、政策金利を上げる方法が一般的に用いられます。
・政策金利を上げると、銀行の住宅ローンや企業への貸し付け金利も高くなります。
・政策金利を上げると、安定運用が目指せる債券へお金がシフトし、株価が下がると言われています。
※正解は一つではありません。さまざまな要因が考えられます。意見や考えの共有し、関心を向けることがねらいです。
・ブログを読んだけど、まだ投資について授業で触れることが不安
・公民の授業との関係性が高まるようを工夫したい
・この〇〇な部分がわからない
そう思われたら、ぜひお気軽にこちらからお問い合わせください。